九月九日山東の兄弟を憶う 王維
本日、九月九日は、
…なんの日がご存知でしょうか?
「重陽の節句」です。別名「菊の節供」ともよばれる、中国伝来の行事です。
菊の花びらを浮かべた菊酒を飲み、食用菊を用いたおひたしを食べたりします。
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九月九日憶山東兄弟 王維
独在異郷為異客
毎逢佳節倍思親
遥知兄弟登高処
遍挿茱萸少一人九月九日(くがつここのか)山東(さんとう)の兄弟(けいてい)を憶(おも)う 王維(おおい)
独(ひと)り異郷(いきょう)に在(あ)って異客(いかく)と為(な)り
佳節(かせつ)に逢(う)う毎(ごと)に倍(ます)ます親(しん)を思(おも)う
遥(はる)かに知(し)る兄弟(けいてい)高(たか)きに登(のぼ)る処(ところ)
遍(あまね)く茱萸(しゅゆ)を挿(さ)して一人(いちにん)を少(か)くを
現代語訳
私は見知らぬ異郷の地で独りぽっちだ。
祝い事の日にはなおさら親兄弟のことが恋しくなる。
(今日は重陽の節句なので)きっと兄弟たちは高台に登って
頭にハジカミの葉を挿しているだろうなあ。
その中に私だけがいないのだ…。
語句
■異客 旅人。 ■佳節 祝い事の日。 ■遥知 (これ以下の内容を)遠くから察する。■遍 あまねく。みんな。 ■茱萸 ハジカミ、山椒の葉。昔の中国では旧暦九月九日の重陽の節句には頭にハジカミの葉をさして高台に登り、薬酒を飲んで邪気をはらう【登高】という習慣がありました。杜甫「登高」参照。
解説
……
漢詩には重陽の節句を詠んだ作品が多いですが、中でも王維の「九月九日憶山東兄弟」はもっとも有名です。
王維が17歳の時、科挙の試験を受けるために親元を離れ、長安に滞在している時の詩です。
普段はそんなでもないけど、祝い事の日に、まわりは家族いっしょに楽しんでいる、そこで我が身の孤独がしみじみ感じられるという内容です。
9月9日重陽の節供は別名「菊の節供」。五節供のひとつ。
中国ではこの日、山椒を身に着けて高い所に登り、菊を浮かべた菊酒を飲んだりごちそうを食べたりすることで長寿を願う習慣があったといいます(『荊楚歳時記』)。
奇数(陽数)は縁起がいいとされ、中でも9が重なる9月9日は最高に縁起がよく、長寿にきく、という発想です。
この習慣が日本に入り、平安時代に宮中行事「重陽節」として定着しました。
江戸時代には五節供として幕府の公式節供とされ、武家社会・庶民にも浸透していきました。
菊の花びらを浮かべた菊酒を飲み、食用菊を用いたおひたしや、栗ごはんを食べます(栗の節供とも)。「くんち(九日)に茄子を食べると中風にならない」ともいいます。
本来は「旧暦の」九月九日(新暦の十月はじめごろ)の行事ですが、現在では「新暦の」九月九日に行われることも多いです。
私は子供の頃、長崎に住んでいたので「長崎くんち」が毎年、楽しみでした。長崎市内にある諏訪神社の祭で、毎年10月7日から3日間(すなわち旧暦の九月九日あたり)行われます。「コッコデショ」の掛け声は、いまでもよくおぼえています。
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