黄鶴楼 崔顥(こうかくろう さいこう)

黄鶴楼 崔顥
昔人已に乗黄鶴去
此地空餘黄鶴楼
黄鶴一去不復返
白雲千載空悠悠
晴川歴歴漢陽樹
芳草萋萋鸚鵡洲
日暮郷関何處是
煙波江上使人愁

昔人(せきじん) 已(すで)に黄鶴(こうかく)に乗りて去り
此(こ)の地 空しく余す 黄鶴楼(こうかくろう)
黄鶴(こうかく) 一たび去って復(ま)た返らず
白雲(はくうん) 千載(せんざい) 空しく悠悠(ゆうゆう)
晴川歴歴(せいせんれきれき)たり 漢陽(かんよう)の樹(じゅ)
芳草萋萋(ほうそうせいせい)たり 鸚鵡洲(おうむしゅう)
日暮(じつぼ) 郷関(きょうかん) 何(いず)れの処(ところ)か是(ぜ)なる
煙波(えんぱ) 江上(こうじょう) 人をして愁(うれ)えしむ

黄鶴楼
黄鶴楼

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現代語訳

伝説にある仙人はすでに黄色い鶴に乗って飛び去ってしまった。
この地にはただ黄鶴楼だけが空しく残っている。

あの黄色い鶴は飛び去ったきり、二度と戻ってはこない。
ただ白い雲が、千年を隔てた今もどこまでも遠く漂っている。

晴れ渡った長江の向こうには、漢陽の木々がハッキリと見える。
中州の鸚鵡洲にはかぐわしい春の草が生い茂っている。

日が暮れてきた。故郷はどっちの方向だろう。
川面を覆う靄が旅人の憂いをかきたてる。

語句

■黄鶴楼 湖北省武昌県の西端。長江に突き出した所にある楼台。仙人伝説があり、古来景勝の地であることから、文人墨客が訪れた。「江南三大名楼」の一つ。 ■昔人 伝説にある、昔この地に来たという仙人。 ■悠悠 どこまでも遠い。 ■晴川 晴れた長江の流れ。 ■歴歴 はっきり見えるさま。 ■芳草 かぐわしい春の草。 ■萋萋 生い茂っているさま。 ■鸚鵡洲 湖北省漢陽県の西南。揚子江の中洲。 ■郷関 故郷。 ■煙波 川面を覆う靄。

解説

黄鶴楼】は湖北省にある長江を見下ろす楼台。
「江南三大名楼」の一つです。

昔この地に「辛氏」という居酒屋がありました。
ある日そこに仙人がやって来ます。

仙人は何ヶ月にもわたって泊まり、さんざん飲み食いします。
心配になってきた主人が問いただすと、「金は無い」と。

その代わりといって仙人は壁に黄色い鶴の絵を描き、
去っていきました。

ところがこの鶴の前で客が手拍子をすると、
壁に描かれた鶴が羽ばたくのです。
たちまち店は評判になり、主人は億万長者になりました。

十年ほど経ったある日、例の仙人がたずねてきて、
「もう借金は返し終わったろう」と、
壁の前で笛を吹きます。

すると壁から鶴が抜け出してきて、
仙人はそれに乗って飛び去った、ということです。

落語に「抜け雀」という似たような話がありますが、
関連があるのかもしれません。

李白が黄鶴楼を訪れた時詩を作ろうと思ったが、この崔顥の詩の前ではこれ以上のものはできないと諦め、後日、金陵(南京)を訪れた時、崔顥の詩に習って、「登金陵鳳皇臺(金陵の鳳凰台に登る」という詩を作ったという逸話が伝わっています。

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朗読:左大臣