詠懐古跡 杜甫(えいかいこせき とほ)

諸葛大名垂宇宙
宗臣遺像肅清高
三分割拠紆籌策
万古雲霄一羽毛
伯仲之間見伊呂
指揮若定失蕭曹
運移漢祚終難復
志決身殲軍務労

諸葛の大名 宇宙に垂る
宗臣の遺像 肅として清高
三分割拠 籌策を紆らし
万古雲霄 一羽毛
伯仲の間に伊呂を見る
指揮若し定まれば蕭曹を失せん
運移りて漢祚終に復し難く
志決して身は殲く軍務の労に

現代語訳

諸葛孔明の名は、あまねく世界に知れ渡っている。
今、廟堂の中の孔明の像は、おごそかに、清らかに、たたずんでいる。

「天下三分の計」に心血を注いで取り組んだ孔明の姿は、
まるで時代を超えて大空を翔る、鳳凰のようだ。

その器量は、殷の伊尹、周の呂尚にも匹敵する。
もし孔明の命令どおり事が行われていたなら、
前漢の名宰相、蕭何も曹参も用なしだろう。

残念ながらすでに後漢王朝の命運は尽きており、
孔明は魏を討つ決意を固めながらも、
軍務の忙しさの中に没してしまったのだが

解説

杜甫は大の孔明ファンでした。
この「詠懐古跡」は、杜甫55歳の時、 長江沿いのキ州に住んでいた頃の作です。

ここには孔明を祭った廟【武侯祠】があります。
遺跡を訪ねて、ロマンにひたってるんですね。
(「蜀相」も同じく孔明の廟を訪ねた詩です)。

孔明が五丈原で病に倒れたのは54歳の時。
一方、杜甫がこの詩を書いたのは55歳の時です。

「ずっと尊敬してきましたが、とうとう貴方より年上になってしまいましたよ」

…そんな感慨も、あったかもですね。
妄想をかきたてられる詩です。

またしても外で録音しています。もういい加減虫の声が無視できないレベルです。そんな季節になってまいりました。

でもまあ、藪の中をガサゴソかきわけていって、「おお、これが孔明の廟か」と、その土のニオイとか、虫にちくちくさされる感じとか、そういうのが出てるような。

朗読:左大臣

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