不識庵機山を撃つの図に題す(川中島) 頼山陽

題不識庵撃機山図 頼山陽

鞭聲粛粛夜過河
暁見千兵擁大牙
遺恨十年磨一剣
流星光底逸長蛇

不識庵機山を撃つの図に題す

鞭聲粛々夜河を過る
暁に見る千兵の大牙を擁するを
遺恨十年一剣を磨き
流星光底長蛇を逸す

現代語訳

馬に当てる鞭の音も静かに、
夜中、上杉軍は千曲川を渡り、川中島にたどり着く。

明け方になって武田軍が気づくと、
目の前に千万の敵兵が旗を擁して迫ってくる。

謙信はこの十年の間、
信玄を討とうと一心に剣を磨いてきたのだ。

そしてあわやとおどりかかる瞬間、
剣の閃光がきらめく。

だが信玄は咄嗟にその剣を避け、逃げ延びる。
またしても討てなかったのだ。

その時の謙信の無念を思うと、 なんとも心苦しい。

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解説

詩吟で有名な川中島です。
「べんせいーしゅくしゅくぅー」と、うなるやつです。
漫画「こち亀」の大原部長がうなってたのが印象的でした。

【不識庵】は上杉謙信、【機山】は武田信玄。
いわずと知れた宿命のライバルですね。

キラーンと剣がきらめく、
その一瞬のチャンスを謙信は逃してしまったのです
(史実はともかく、この詩では)。

実にドラマチックな、少年ジャンプ的な絵じゃないですか。
「なん…だと?」「バ…バカなッ!!」
そんな吹き出しも入りそうな感じです。

【鞭聲粛々】 鞭の音を抑えて、ひっそり進んでいるさま。
【大牙】 大将旗。
【遺恨十年】 謙信が信玄を打とうとこの十年ひたすら剣を磨いてきた、そのかんじ。

【流星光底】 打ち下ろした剣の閃光の下に
【長蛇】 大敵。ここでは信玄。

九月十三夜 上杉謙信
↑こちらは謙信の作。

偶作 武田信玄
↑そしてこちらが信玄の作です。

朗読:左大臣