隠者を尋ねて遇わず 賈島
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尋隠者不遇 賈島
松下問童子
言師採薬去
只在此山中
雲深不知處
隠者(いんじゃ)を尋(たず)ねて遇(あ)わず 賈島(かとう)
松下(しょうか) 童子(どうし)に問(と)うに
言(い)う「師(し)は薬(くすり)を採(と)りに去(い)けり」と。
只(た)だ此(こ)の山中(さんちゅう)に在(あ)らん
雲深(くもふか)くして処(ところ)を知(し)らず
現代語訳
松の木下で童子に尋ねると、
童子は言った。
「先生は薬を採りに行かれました」
この山中にいらっしゃるのだろう。
雲が深くて行方はとてもわからないが。
解説
いつ帰ってくるかわからない。明日か、半年後か…
「隠者」の隠者っぷりが、よく出ている詩です。
諸葛孔明を訪ねていった劉備のエピソードが思い浮かびます。
賈島(779-843)。晩唐の詩人。范陽(北京市)の人。
進士に合格せず、出家して「無本」と号するも、韓愈の薦めで還俗。
後にしっかり進士に合格しています。
苦吟をもって知られます。
ある時賈島はロバに乗って詩の文句を考えていました。
そして「僧は推す月下の門」という句を得ます。
…口ずさんでみると、なかなかいい句です。
しかし「僧は敲く」とするのも捨てがたい。
「僧は推す」「僧は敲く」どっちがいいだろう。
決めかねたままウンウンうなる賈島。
ロバはどんどん進んでいきます。
ところがその先の道を長安都知事、韓愈の行列が横切っていました。
ロバは行列の中に突っ込んでしまい、
たいへんな騒ぎになりました。
引っ立てらる賈島。韓愈がわけをたずねます。
すると詩の文句で迷っていたという話。
「それは『敲く』がよかろう。深夜に扉を敲く音が
響くのは、まことに風流じゃ」
韓愈の言葉で、賈島は『敲く』に決めたということです。
ここから、文章をあれこれ練り直すことを
「推敲」と言うようになりました。
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