偶作 武田信玄
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偶作 武田信玄
鏖殺江南十萬兵
腰閒一劍血猶腥
豎僧不識山川主
向我慇懃問姓名
偶作(ぐうさく) 武田信玄(たけだしんげん)
鏖殺(おうさつ)す江南十萬(こうなんじゅうまん)の兵(へい)
腰間(ようかん)の一剣(いっけん) 血(ち) 猶(な)お腥(なまぐさ)し
豎僧(じゅそう)は識(し)らず山川(さんせん)の主(ぬし)
我(われ)に向(むか)って慇懃(いんぎん)に姓名(せいめい)を問(と)う
現代語訳
南方では敵十万を皆殺しにした私である。
腰の刀はまだ血なまぐさい。
しかしこの小坊主は、私がこの山川の
領主だなどと夢にも思わない。
私に向かって、丁寧に姓名を尋ねてきた。
語句
■偶作 たまたまできた作品。 ■鏖殺 皆殺し。 ■江南 本来は長江下流域をさす。しかし日本の甲斐が基準なので今川の駿河か、北条の相模か。 ■豎僧 小坊主。クソ坊主。 ■慇懃 丁寧に。
解説
不敵というか、邪悪というか…
信玄の「陰」の部分が出ていると思います。
詩吟で知られる「題不識庵撃機山図」は、
上杉謙信と武田信玄の川中島での対決を描いています。
「九月十三夜陣中の作」は、ライバル謙信公の作です。
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朗読:左大臣光永