元二の安西に使するを送る 王維(げんじのあんせいにつかいするをおくる おうい)

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送元二使安西
渭城朝雨潤輕塵
客舎青青柳色新
勧君更盡一杯酒
西出陽關無故人

元二の安西に使するを送る
渭城の朝雨 軽塵を潤し
客舎青青柳色新たなり
君に勧む更に盡くせ一杯の酒
西のかた陽關を出ずれば故人無からん

現代語訳

渭城の朝の雨が軽い砂埃を潤している
旅館の前の柳の葉色も雨に洗われて瑞々しい

君にすすめる。
昨夜は大いに飲み明かしたが、
ここでもう一杯飲んでくれ。

西域地方との境である陽関を出れば、
もう友人は一人もいないだろうから。

解説

別れの歌といえばこれ、というほどの定番。李白「友人を送る」と共に、送別歌の双璧とされます。

【元二】は、「元」家の次男という意味の「排行」(同性の一族に年齢順に番号をふったもの)。【元二】さんの本名はわかっていません。

その元二さんが【安西都護府】という、西域地方に対する辺境守備隊みたいなもんですね。そこに書状をたずさえて、使者として旅立つのです。

王維はその元二さんを見送ります。旅館で一晩飲み明かした。いろいろな話をして、がんばってこいよと。そして早朝から出発です。

昨夜は目一杯呑んだが、いざ別れとなると、やっぱり名残惜しい。ささ、この最後の一杯を呑んでくれと。

九月九日山東の兄弟を憶う」「鹿柴」「竹里館」と並び、王維の代表作と言えるでしょう。

別名を「贈別」「渭城曲」「陽関」ともいい、「陽関三畳(ようかんさんじょう)」はこの詩の一部を繰り返して三回歌うことです。

近年、元の時代に歌われていた楽譜が発見され、それに基づいて今も歌われているそうです。

【安西都護府】は現在の新疆ウイグル自治区のトルファンにありましたが、玄宗皇帝の時代にもっと西の庫車(クチャ)に移されました。

【渭城】は渭水を挟んで唐の都長安と向かい合う街で現在の陝西省咸陽市。長安から西方に旅立つ人をここで見送る習慣でした。

【朝雨】 朝の雨。 【軽塵】 軽い砂埃。

【客舎青青柳色新たなり】 【客舎】は旅館。その旅館の前の【柳色】(柳の色)が【青青】(青々としている)。印象的に残る描写です。

柳は【別れ】を想起させるイメージです。中国では送別の時に柳の葉で輪を作って贈る習慣があります。【柳】には【別れ】が結びつくのです。

【陽関】は敦煌の西南約70キロにある天山南路の関所。一方、天山北路の関所は玉門関(「子夜呉歌」李白)です。いずれも西の最果て。その先はひたすら砂漠です。この世の果て、って感じです。

【故人】は古くからの友人の意。漢詩には頻出する言葉です。「死んだ人」の意味じゃありません。

惜別の歌」←島崎藤村の詩を元に改作した詞です。「元二の安西に使いするを送る」と似た雰囲気を持っています。こちらで朗読しています。

送別歌のもう双璧のもう一方である、李白「友人を送る」もゼヒ、聴いてみてください。

雪が降った後の神社のひさしからボタボタ雪解け水がこぼれている状況で録音しました。

朗読:左大臣

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