詠懐詩 阮籍(えいかいし げんせき)
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詠懐詩 阮籍
夜中不能寐
起坐弾鳴琴
薄帷鑒明月
清風吹我襟
孤鴻號外野
翔鳥鳴北林
徘徊将何見
憂思独傷心
詠懐詩(えいかいし) 阮籍(げんせき)
夜中(やちゅう) 寝(い)ぬる能(あた)はず
起坐(きざ)して鳴琴(めいぎん)を弾(だん)ず
薄帷(はくい)に明月(めいげつ)鑒(て)り
清風(せいふう) 我(わが)が襟(えり)を吹(ふ)く
孤鴻(ここう) 外野(がいや)に號(さけ)び
朔鳥(へきちょう) 北林(ほくりん)に鳴(な)く
徘徊(はいかい)して将(まさ)に何(なに)をか(み)見る
憂思(ゆうし)して独(ひと)り心(こころ)を傷(いた)ましむ
現代語訳
夜中寝ることができず、起き上がって座り、琴を弾いてみた。
薄い帳を明月の光が照らし、清らかな風が私の襟に吹き付ける。
野外で鴻(おおとり)が叫び、北の林で雁が鳴いている。
外を出歩いたからといって見るべきものはない。憂鬱な物思いに沈み、独り心を痛めるのだった。
語句
■起坐 起き上がって座る。 ■鳴琴 琴。 ■薄帷 薄い帳。 ■鑒 鑑。かんがみる。照らすこと。 ■孤鴻 群を離れた一羽の鴻(おおとり)。大きな鳥。 ■翔鳥 飛び回る鳥ども。 ■憂思 愁い沈む。
解説
阮籍(210-263)は竹林の七賢の一人。竹林の七賢というのは、魏の時代の末期、竹林の中で酒を呑んで哲学を論じたりした、世捨て人的な人々のことです。阮籍はそのリーダー格の人物でありました。
阮籍は八十二首の「詠懐詩」を遺しており、これはその中の一首です。
魏の末期は臣下の司馬一族が政治を取り仕切り、国が荒れまくっていました。そんな中で現実に絶望し、世をはかなんで清談にふけったわけです。
阮籍は奇人変人として知られ逸話が多い人物です。好きな相手と会う時は青眼、つまり普通の目で応対し、気に入らない俗物と会う時は白眼、つまり白目をむいて会ったといいます。好き嫌いをハッキリさせたのです。
「白眼視」という言葉は、ここに由来します。
同じく夜に琴を弾いている詩に王維「竹里館」があります。こちらは悲壮感無いです。
北原白秋に「竹林の七賢」という詩があります。
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