吉田義卿を送る 佐久間象山

送吉田義卿 佐久間象山

之子有霊骨
久厭ベツ躄群
振衣萬里道
心事未語人
雖則未語人
忖度或有因
送行出郭門
孤鶴横秋旻
環海何茫茫
五洲自成隣
周流究形勢
一見超百聞
知者貴投機
帰来須及辰
不立非常功
身後誰能賓

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吉田義卿を送る 佐久間象山

之の子 霊骨有り
久しく厭う ベツ躄(べき)の群
衣を振るう 萬里の道
心事 未だ人に語らず
則ち未だ人に語らずと雖(いえ)ども
忖度(そんたく)するに或は因有あり
行(こう)を送りて郭門(かくもん)を出ずれば
孤鶴(こかく) 秋旻(しゅうびん)に横たわる
環海(かんかい) 何ぞ茫茫(ぼうぼう)たる
五洲 自(おのずか)ら隣を成す
周流(しゅうりゅう)して形勢を究めよ
一見は百聞に超えん
知者は機に投ずるを貴ぶ
帰来(きらい) 須(すべから)く辰(とき)に及ぶべし
非常の功を立てずんば
身後 誰か能く賓せん

現代語訳

君は高い志を持った男だ。
そこいらの俗人の群にまじっているのを長い間嫌っていたのだろう。
そして君はいよいよ衣を一払いして、万里の道を旅立っていく

君は心の中をまだ誰にも語っていない。
誰にも語っていなくても、私には君の心がよくわかる。

君を送って江戸の町外れの門を出ると、一羽の鶴が
凛として秋の空を横切って飛んでいった。
まるで君の高い志をあらわしているように、すがすがしい。

この国のまわりは茫々たる海ばかりだ。
だがその海の隣には世界の強国が日本に接しているのだ。

行って世界の情勢を見てくるがよい。
百聞は一見にしかずだ。

知恵ある者は、機会を逃さない。
そしてもちろん、時期を見て必ず戻って来い。

君がどんなに大人物でも、大事を成し遂げてそれを表に出さなければ、
君のまわりの誰が、君をよく評価するだろう。

解説

1853年嘉永6年、ペリーの黒船につづき、
長崎にロシアのプチャーチン艦隊が入港します。

吉田松陰は、長崎にロシアの船団が入港していると聴き、
欧米を知るチャンスだ。船に乗せてもらって欧米へ
渡ろう。そして日本の役に立つ技術を学んでこようと
いきり立ちます。

しかし密航など、とんでもない
話です。一族に処罰がおよびかねないです。それでも、
吉田松陰の決意は、ゆるぎませんでした。

「先生、私は長崎へ行きます」

「よし、行ってこい!」

師の佐久間象山もずいぶん破天荒な人物でした。
弟子の長崎行きを止めるどころか、応援して詠んだのがこの詩です。

朗読:左大臣

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