漢江 杜牧

漢江 杜牧
溶溶漾漾白鷗飛
綠淨春深好染衣
南去北來人自老
夕陽長送釣船歸

漢江 杜牧
溶溶漾漾(ようようようよう) 白鷗(はくおう)飛ぶ
綠淨(きよ)く春深く衣(い)を染むるに好し
南去北來(なんきょほくらい) 人自(おのず)から老ゆ
夕陽(せきよう)長く送る釣船(ちょうせん)の帰るを

現代語訳

漢江はこんこんと水をたたえ水面は日の光を反射してゆらゆらと揺れる中、
白いカモメが飛んでいく。

緑は清らかで、春は深く、私の衣を染めるようだ。
南へ北へ行き来しているうちに、気が付くと人は年を取ってしまう。
夕陽が、家に帰っていく釣り船をいつまでも見送っている。

語句

■漢江 川の名。漢水。長江の支流。陝西省西部に源を発し、東に流れ、武漢で長江に注ぐ。 ■溶溶 水がこんこんと湛えているさま。 ■漾漾 水面がゆらゆら揺れているさま。 ■南去北來 南へ行ったり、北へ行ったりすること。

解説

うららかな春の日。漢水のほとりにたたずんだ詩人の感慨です。漢水は長江の支流。陝西省西部に源を発し、東に流れ、武漢で長江に注ぎます。

川の緑と白いカモメが鮮やかな色彩のコントラストを描きます。しかし転句でふと詩人は思い至るのです。ああ、人生は忙しく、北に南に駆け回っているうちに、ふと気づくと年を取っていると。

百人一首の蝉丸の歌「これやこの行くも帰るもわかれては知るも知らぬも逢坂の関」の感慨にも、通じるものがありますね。

結句は、夕陽がいつまでも照らして家に帰っていく釣り船を包みこみ、まるで見送っているようだと、印象的な景色でしめます。春のうららかな漢水の景色の中に、人生の悲哀を感じさせる詩です。

朗読:左大臣