杜甫「李白を夢む」

こんにちは。左大臣光永です。

今日は参考文献の買い出しのために
神保町に行ったんですが、
神保町の番地の振り方は、変わってます。

靖国通りをはさんで北のブロックが偶数番地。
南のブロックが奇数番地と割り振ってあるんですね。

海外では一般的な住所の振り方だそうですが、
最初かなり戸惑いました。

さて、

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この商品に関連して、本日も杜甫の詩を
お届けします。「李白を夢む(夢李白)」です。

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李白が罪人として捕えられている時、杜甫が夢の中に李白が見えたことを歌った詩です。

安史の乱のさなか、李白は永王李リンの軍に参謀として加わり、反乱軍と戦いました。しかし李リンは皇帝粛宗に無断で軍勢を動かしていたのでした。後に皇帝粛宗からこのことを追及されて永王李リンは処刑され、李白も反乱に与したということで遠く夜郎の地に流されることとなりました。

しかし長江をさかのぼり白帝城のあたりで恩赦の使者が届き、李白は許され、引き返しました。そして江陵にくだり、岳州にもどってのんびり暮らしていました。

しかし杜甫は李白が赦免されたことを知らず、李白を気遣い、夢の中にまで李白を見ます。

夢李白 杜甫

死別已呑聲
生別常惻惻
江南瘴癘地
逐客無消息
故人入我夢
明我長相憶
恐非平生魂
路遠不可測
魂來楓葉青
魂返關塞黑
君今在羅網
何以有羽翼
落月滿屋梁
猶疑照顏色
水深波浪闊
無使蛟龍得

李白を夢む 杜甫

死別は已(すで)に聲(こえ)を呑(の)み
生別は常に惻惻(そくそく)たり
江南(こうなん)は瘴癘(しょうれい)の地
逐客(ちくかく)より消息無し
故人(こじん)の我が夢に入るは
我が長相憶(ちょうそうおく)を明(さと)りしならん
恐らくは平生(へいぜい)の魂(こん)に非(あら)ざらん
路(みちの)遠くして測(はか)る可(べ)からず
魂(こん)の來たるとき楓葉(ふうよう)は青く
魂(こん)の返るとき関塞(かんさい)は黒し
君は今 羅網(らもう)に在(あ)るに
何を以(もっ)てか羽翼(うよく)有(あ)る
落月(らくげつ) 屋梁(おくりょう)に満つ
猶(な)お疑う 顏色(がんしょく)を照らすかと
水深くして波浪(はろう)闊(ひろ)し
蛟龍(こうりゅう)をして得さしむること無かれ

現代語訳

死別はもう声を飲みこんで悲しみに耐えるしかないが、
生き別れはいつも心を痛ませるものだ。

江南は大気に毒を含む危険な地だ。
追放された李白から消息を知らせる便りは届かない。

わが友李白が夢の中に入ってきたのは、
私が彼を常に思い慕っているのを、
彼が感じ取ったからだろうか。

だが夢の中の李白は、
どうもいつもの彼ではなかったようだ。

李白の追放された江南までの道ははるかに遠く
おしはかることもできない。

李白の魂は楓の葉は青々とした江南からやってきた。
そして李白の魂が帰った後は、
私のいる秦州の城塞はただ黒々と横たわる。

君は今、網に捕らわれているのに、
どうして羽をはばたかせて、私のもとまで
やって来れたのか。

落ちかかる月の光が建物の梁に満ちている。
私は思う。同じ月の光が、
君の顔を照らしているのかしらと。

君のいる地は水が深く波が広がっているそうだが、
どうかみずちに食われることが無いように
気を付けたまえ。

語句

■死別云々 解釈が別れる。死別も悲しいが性別もそれに劣らず悲しいということか? ■惻惻 心を痛ませるさま。 ■瘴癘 湿地などに発生する毒気に当てられて発生する熱病。マラリアの類。 ■逐客 野郎に流された李白を指す。 ■故人 友人。 ■長相憶 いつも思い慕っていること。 ■平生魂 いつもの魂。 ■楓葉 李白のいると杜甫が思っている江南には、楓が多い。 ■関塞 杜甫のいる秦州のとりで。 ■羅網 鳥あみ。李白が罪人として捕らわれていることを指す。 ■落月 落ちかかる月の光。 ■屋梁 建物の梁。 ■蛟龍 みずち。水の中に住み、人を呑むという想像上の生き物。ここでは李白の周りにいる悪人たちを指す。


浮雲終日行
游子久不至
三夜頻夢君
情親見君意
告歸常局促
苦道來不易
江湖多風波
舟楫恐失墜
出門掻白首
若負平生志
冠蓋滿京華
斯人獨憔悴
孰伝網恢恢
將老身反累
千秋万歳名
寂寞身後事

浮雲(ふうん) 終日(しゅうじつ)行(ゆ)く
游子(ゆうし) 久しく至らず
三夜(さんや)頻(しき)りに君を夢む
情親(じょうしん) 君が意(い)を見る
帰るを告(つ)げて常に局促(きょくそく)たり
苦(ねんごろ)に道(い)う来たること易(やす)からず
江湖(こうこ)風波(ふうは)多し
舟楫(しゅうしゅう)恐らくは失墜(しっつい)せんと
門(もん)を出(い)でて白首(はくしゅ)を掻(か)く
平生(へいぜい)の志(こころざし)に負(そむ)くが若(ごと)し
冠蓋(かんがい)京華(けいか)に満つるに
斯(こ)の人のみ独(ひと)り憔悴(しょうすい)す
孰(たれ)か伝(い)う 網恢恢(あみかいかい)たりと
將(まさ)に老いんとして身反って累(つみ)せらる
千秋万歳(せんしゅうばんざい)の名
寂寞(せきばく)たる身後(しんご)の事

現代語訳

浮き雲は一日中流れて戻ることは無い。
同じく旅人は久しく行って戻らない。

三晩続けてしきりに君を夢に見た。
君が私に深い情愛の気持ちを抱いてくれていることが、
それでわかった。

帰ることを私に告げるが、いつも
そわそわと落ち着かない様子だ。

そしてしきりに言うのだ。来ることは難しい、
江南の水郷では、風波が多いから、
舟のかじを落としてしまうかもしれないと。

君は門を出て、白髪頭を掻く。
平素からの志を遂げられないでいる様子だ。

花の都では冠をかぶり、
車に覆いをした貴人たちが満ちているのに、
この人だけがやつれ果てている。

誰が言ったのか天網恢恢疎にして漏らさずとは。
実際には罪の無い者が処罰されているではないか。

李白は老境の身で、罪に問われているのだ。
たとえ千年万年の名声を得ようとも、
それが死んだ後のことでは、なんと寂しいことか。

語句

■浮雲終日行 游子久不至 「古詩十九縊」(『文選』二十九・第一首)に「浮雲白日を蔽い、遊子復た返らず」とあるによる。 ■局促 心恐れて落ち着かないさま。 ■苦道 しきりに言う。 ■江湖 李白のいる江南の水郷。 ■舟楫 舟のかじ。 ■若負平生志 李白が普段から言っていた志を遂げられずにいるようだ。 ■冠蓋 冠と車の覆い。大官が用いるもの。 ■京華 花の都。 ■憔悴 やつれ果てたさま。 ■網恢恢 「天網恢恢疎にして漏らさず」(『老子』七十三章)。天の網は目があらいようでも、悪人はけして逃さない。悪事をすれば必ず発覚して、報いを受けるということ。 ■千秋万歳名 千年万年と朽ちない名誉。魏の阮籍の詩に「千秋満歳の後、栄名安(いず)くにか之(ゆ)く所ぞ」とある。 ■身後事 死後の事。

補足

古来、夢の中に人が出てくるのは、自分が相手を思っているからではなく、相手が自分を思っているから、夢にその人物が現れるとされました。だから夢に人が出てくるのはその相手から強く思われていることで、嬉しいのです。

『伊勢物語』東下りの章段では、遠く都を離れ駿河の宇津谷峠に至った主人公が、都に残してきた愛しい人を想って歌を詠みます。

駿河なるうつの山辺のうつつにも夢にも人にあはぬなりけり

駿河の国の宇津の山辺を通っていくと、さびしくて人通りもありません。現にはもとより夢の中でさえあなたに会いできないのです。

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朗読:左大臣