九日藍田崔氏莊 杜甫

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九日藍田崔氏莊 杜甫
老去悲秋強自寬
興來今日盡君歡
羞將短髪還吹帽
笑倩旁人為正冠
藍水遠從千澗落
玉山高並兩峰寒
明年此會知誰健
醉把茱萸仔細看

九日(きゅうじつ) 藍田(らんでん)の崔氏(さいし)の莊(そう) 杜甫
老い去って悲秋 強いて自ら寬(ゆる)うす
興来って今日(こんにち)君が歓を尽くす
羞ずらくは短髪を将(も)って還(ま)た帽を吹かるるを
笑って旁人(ぼうじん)を倩(たの)んで為に冠を正さしむ
藍水は遠く千澗より落ち
玉山は高く両峰と並んで寒し
明年此の会 知んぬ誰か健なる
酔うて茱萸(しゅゆ)を把(と)って仔細に看(み)る

現代語訳

年老いて悲しみに満ちた秋、私は強いて自ら心の悩みを和らげるため、
興がわくままに今日、君の歓待をすっかりお受けしよう。

恥しいことに、髪が短いため風で帽子を吹き飛ばされてしまい、
笑って傍らなる人にたのんで冠を正してもらった。

この藍田を流れる藍水は遠くたくさんの山や谷から流れこんでおり、
玉山は高く両脇の峰と並んで寒々としている。

来年の重陽の節句の会には、どれだけの者が健在していようか。
私は酔ってハジカミの葉をじっと見入る。

語句

■九日 九月九日重陽の節句。この日は高台に登り頭にハジカミの葉を差して邪気を払った。王維「九月九日憶山東兄弟」 ■藍田 地名。現在の陝西省藍田県。 ■荘 別荘。 ■老去 年老いること。 ■悲秋 悲しみをそそられる秋。 ■寛 心の悩みをやわらげる。 ■吹帽 帽子が風で吹き飛ばされること。 ■藍水 藍田の東から流れる川。 ■千澗 多くの谷と川。 ■玉山 藍田にある山。 

解説

乾元元年(758年)杜甫47歳の作。この時杜甫は粛宗の怒りに触れ華州(陝西省華県)に左遷されていました。そのさなか、崔氏の別荘で重陽の節句が開かれたのです。ハジカミの葉をじっと見入る杜甫の姿が印象に残ります。

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