近江八景 大江敬香

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近江八景 大江敬香
堅田落雁比良雪
湖上風光此処治
煙罩帰帆矢走渡
風吹嵐翠粟津洲
夜寒唐崎松間雨
月冷石山堂外秋
三井晩鐘瀬田夕
征人容易惹郷愁

近江八景(おうみはっけい) 大江敬香(おおえ けいこう)
堅田(かたた)の落雁(らくがん) 比良(ひら)の雪(ゆき)
湖上(こじょう)の風光(ふうこう) 此処(ここ)に治(おさ)まる
煙(けむり)は帰帆(きはん)を罩(こ)む矢走(やばせ)の渡(わたし)
風(かぜ)は嵐翠(らんすい)を吹(ふ)く粟津(あわづ)の洲(しま)
夜(よる)は寒(さむ)し 唐崎(からさき) 松間(しょうかん)の雨(あめ)
月は冷たし 石山 堂外の秋
三井(みい)の晩鐘(ばんしょう) 瀬田(せた)の夕(ゆう)べ
征人(せいじん) 容易(ようい)に郷愁(きょうしゅう)を惹(ひ)く

現代語訳

堅田に雁の群れが舞い降り、比良の高嶺には雪がふりしきる。
琵琶湖の景色の素晴らしさは、ここに尽きる。
矢走の渡では夕靄が帰船を包み込み、
粟津の砂浜では風が青々とした樹木をゆらす。
唐崎では松の間に雨が降り夜は寒々としている。
石山寺の秋の月が冷ややかに照らしている。
三井寺で夕暮れに鳴り響く鐘の音、夕暮れの瀬田の風景。
旅人なら誰しも郷愁をそそられる、近江の景色よ。

語句

■近江八景 琵琶湖の湖南の景勝地。。「瀬田の夕照」「石山の秋月」「粟津の青嵐」「三井の晩鐘」「唐崎の夜雨」「比良の暮雪」「堅田の落雁」「矢橋の帰帆」をさす。室町時代に中国の「瀟湖八景」に模して選ばれた。江戸時代に浮世絵師安藤広重によって絵に描かれたことで有名になった。この詩は広重の絵を見て詠んだもの。■堅田 琵琶湖の西。堅田の浮御堂で有名。現滋賀県大津市堅田。堅田の落雁は近江八景の一つ。「錠あけて月さし入れよ浮御堂(松尾芭蕉)」。 ■比良 比良山。比良の暮雪は近江八景色の一つ。 ■風光 よい景色 ■帰帆 帰り船 ■罩 つつみこむ。 ■矢走 矢橋(やばせ)。「矢橋の帰船」は近江八景の一つ。現滋賀県草津市。 ■嵐翠 青々とした樹木。 ■粟津 現滋賀県大津市粟津。「粟津の青嵐」は近江八景の一つ。木曽義仲が討ち死にした場所。 ■唐崎 現滋賀県大津市唐崎。「唐崎の夜雨」は近江八景の一つ。「唐崎の松は花より朧にて(松尾芭蕉)」 ■石山 石山寺。現滋賀県大津。西国巡礼十三番札所。市瀬田川のすぐ西。月の名所。紫式部が『源氏物語』の着想を得た伝説が残る。境内には珪灰石がひしめく。■三井 三井寺。正式名長柄山圓成寺 。現滋賀県大津市にある。「三井の晩鐘」は近江八景の一つ。 ■瀬田 「瀬田の夕照」は近江八景の一つ。

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朗読:左大臣光永

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