郷に回りて偶ま書す 賀知章
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回鄕偶書 賀知章
少小離家老大回
鄕音無改鬢毛衰
兒童相見不相識
笑問客從何處來鄕(きょう)に回(かえ)りて偶(たまた)ま書(しょ)す 賀知章
少小(しょうしょう)家を離れて老大(ろうだい)にして回(かえ)る
鄕音(きょうおん) 改(あらた)まるなく 鬢毛(びんもう) 衰(おとろ)う
児童(じどう) 相見(あいみ)るも 相識(あいし)らず
笑って問(と)う 客(かく) 何処(いずこ)より来(きた)ると
現代語訳
若い頃家を離れて大いに年を取ってから故郷に帰ってきた。
ふるさとの訛りは変わっていないが、耳のあたりの毛は衰えている。
私の子供たちは私を見ても誰だか互いにわからない。
笑って質問する。お客様はどこからいたらしのと。
語句
■回鄕 故郷に帰る。 ■偶書 思いつくままに書く。 ■少小 若い頃。 ■老大 年を取ったこと。 ■郷音 ふるさとの訛り。 ■鬢毛 耳ぎわの髪の毛。 ■児童 作者の子供(孫?)たち。 ■客 お客様
解説
作者賀知章は80歳すぎて「道士になる」と言い出し、官職を辞して故郷に帰りました。約半世紀ぶりに戻った故郷。そうはいっても、俺は都にそまっていないし、国訛りは若い時のままだし、ま、髪の毛は白くなって見てくれはじじくさいが、本質は何も変わっていないぞ。ところが、出迎えた子供たち…おそらく作者賀知章の孫たちが言うのです。お客さん、どこから来たの。お客さん…そうか。俺は半世紀を都で過ごしている間に、すっかりお客さんになってしまっていたのだなあ。故郷と遠く隔たってしまったのだなあ。深く感じ入る賀知章でした。
短くサラッとした詩ですが、しみじみとした情緒を切り取って、味わい深いです。
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